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2006/02/20

阿佐スパ「桜飛沫」へ

言葉ではさよならでしかない君の気持ちに光が射してきれいだ

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昨日、阿佐ヶ谷スパイダースのお芝居「桜飛沫」を見てきた。

この芝居を作・演出した長塚圭史さんは、
2005年度の読売演劇大賞の優秀作品賞をとった
「LAST SHOW」を書いた方で、
たぶん若手で一番注目されてる演劇人と言っていい。

今回の作品は二部構成の時代劇。
ある寂れた村のお話から始まる。

そこには悪い権力者三兄弟がいて、
「三人以上子供をつくってはいけない。それ以上いたら殺生する」
というおふれを出していた。

その悪人たちには子供ができずそのハライセだったが、
村民は性欲を全く押さえられない人だらけ。
秘密は、蛇を食べているかららしい。

別の土地から医師がきて避妊の仕方を教えてあげても変わらず、
規定の人数を超えた子供は殺される運命を避けることができない。

目の前で息子を殺された村民たちは悲しみ、
自分たちをいじめる兄弟を殺す計画を立てる。

プロローグはそんなところで、そこに残忍な暴力や、小さな恋心、
安易に暮らしていた過去によって落ちていった人たちの曲がった感情が、
ブラックなユーモアにまじって嵐のように登場する。

舞台上には、桜の木が堂々と設置されていた。
幹のしなりや花びら、本物みたいに豪華だった。

花びらがぱらぱらと散る様子はまるで映画のよう。
みとれた。
長塚さん自身、
「舞台で映画的な世界を作ろうと思ってた時期があるんですよ」
とパンフでのSABU監督との対談で語っていたけれど、もうクリアしているなぁ。

普通の言葉がとっても印象的なタイミングに入ってくるんだもの、泣けた。
物語においては、セリフが美しい必要はなくて、シーンの美しさが大切だ。
北野武監督のを見ると、そのことを感じることが多い。

日常だってそうだ。
彼が何を言ったかよりも、その場面に光や自然がどう寄り添うか、みたいな。
そういうことばかり、記憶に残ってしまうことってありませんか。

さて、そのお芝居の内容を、わたしなりに噛み砕いてみると、
ここに出てくる人たちはみんな死にたがっていて、
自分で自分を悪い方に持っていってるという風に思えた。
それは信念のために、だ。
信念のために死にたい。
つまり、ただでは死にたくないってことだ。

そして、信念は単純に欲望でしかない。
信念なんて所詮は独り善がりだ。

だけど独り善がりがわたしをあらわしている。
独り善がりが、その人をキュートにしている。

長塚さんの作品は、否定から入って結局ぐるっと肯定して終わる。
独り善がりは汚いことだけれど、独り善がっていいじゃない。
そう思うお芝居だった。

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コメント

ユメギワちゃんこんばんは。

実はこの記事会社ですでに拝見していたんですが
とっても胸に残るお話だったので自宅へ感想を暖めて 持ち帰りました
素敵なお話 ありがとう。
 言葉そのものでなくて、それをとりまく場面って確かに強烈ですね
同じ情景、光の感じなんかを目にしたときに、忘れていたのに誰かからの
言葉を思い出すことってあるしボキャブラリーの少ない私なんかにとっては
活字にして日記をつけるより、強烈に思い出させてくれるものかもしれないです

 信念は独り善がり、か。
でもその独り善がりのパワーから作品や恋なんかが生まれてくるのかも
しれないなぁってユメギワちゃんの文章を読んで思いました

 そして銀杏BOYSのライブと同様とても、私自身このお芝居を
観たいと思ったのだけれど、残りの公演、、チケット完売でしたぁ うぅ 、またもや。
 またユメギワちゃんおすすめのよさそうなお芝居なんかがあったときには
是非教えてくださいね。

投稿: nyoromakiko | 2006/02/20 21:27

素敵な話だなんて、そんな。
素敵なのは長塚さんが描く世界ですよ。

演劇について表現するのは難しいですね。
うまく伝わっているとは思えない。
だから、見てもらうのが一番いいなぁと思います。

それなのにまた終わった時に書いちゃいました。
もっと早く書けば見るチャンスもあったかもですね。

まぁ、また別の公演もやります。
阿佐ヶ谷スパイダースのお芝居はいつもキレイですよ。
切なくて、物悲しくて。

嫉妬するのもあきれるほど、素晴らしい才能です。

それから、
にょろこさんは写真を撮られるので特に、
言語によるものよりも、その現場にあるものを
捕らえる能力に長けているんじゃないかと思います。

海の写真とか、そういう素敵な力が宿っているのがありましたよね。

わたしの方も、短歌でそういう言語に頼らない何かが書けたらすごいなぁ、頑張ります。

投稿: ユメギワ | 2006/02/21 19:55

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