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2009/05/29

趙南淵さんについて

前回の日記で予告した通り、趙さんについて書く。

出会いは今月の文学フリマ。
「乙女会文芸部」として三回目の出店でこの日、
買いにきてくれた友人とわたしは、
会場をふらふらと当てもなく歩いていた。

人様の作品を買うつもりなんか全然なかった。
けれど、趙さんたちのブースの前で足が止まった。

センスのいい写真がカードサイズの中に納まって、
短編小説に添えられていた!
小説のフォントの雰囲気もおしゃれな感じがして、
わたしの心は宙にふわっと浮かんだ。

単純に言うならば一目ぼれというやつだった。
(趙さんご本人はブースにいませんでしたので、
 作者にではなくて、作品に、です)

作品はなんと1枚50円で売られていた。
ぜんぶで10作品。

なんか、これ、ちょっとよさそう・・・。

そこで、わたしは2枚だけ買うことにした。
「100円」という響きにめっぽう弱いのだ。
もしめちゃめちゃつまらなくても損しない。
という打算めいたものももちろんあった。

選んだのは、
「産業廃棄物」と「小林」という二作品だった。

「小林」は、
社内に「小林」が多すぎるゆえの弊害を、
ダイナミックに心を解剖して、執拗に描いている。
「鈴木」の姓で生きてきた自分には、
ひとごとには思えないおかしさがあった。

そして、「産業廃棄物」。
ある日、主人公が家に帰ってくると、
父親にそっくりの産業廃棄物があった―という物語。
なんとも不可思議な設定なんだけれども、
その不可思議さを越える美しいスピリットに、
かたかた音を立てそうなほど、心が震えた。

説明的なところのないすばらしい不思議な物語だった。
でも、現実的というか、地に足がついている、
そういう強い不思議さを持っていた。
切ないというか、尊さを感じた。
宝物を見つけた感覚だった。

それは、趙さんの作品自体と、
趙さんの作品に美を見出した自分の心に対して。
両方が宝物だと思えた。

そこで、作品に書かれたメールに、
思い切ってメッセージを送らせていただいた。
そうしたら、ご本人から丁寧に返信をいただき、
残りの8作品も販売していただくことに。

そのどれもがまた面白かった!
「議論」、「ワンと鳴くネコ」、「ドア」、「披露宴」、
「制服」、「新しい靴」、「鹿」、
「ポケット付きのズボン」、「ボール」。
タイトルだけ見たら、ごく普通でしょう。
(※「ワンと鳴くネコ」、は変か!)

タイトルと同じように、物語の始まり方もごく普通。
だけど、気付いたらすごい世界に迷いこんでいる。

これは冷静な文体ゆえなのかもしれないけれど、
小説の中では、不思議な世界が当たり前の世界として、
少しの照れもなく、ぶれないで、描ききってある。
だから、こっちも疑いの眼なんか、どっかに行っちゃうのだ!

すごい筆力の持ち主だと思った。
その筆力はブログ「ヒアシンス」でも発揮されています。
良かったらご覧になってみてください。

皆さんにも作品を手にとってもらいたいです。
特に「披露宴」と「産業廃棄物」がおすすめです。

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